「産後の体がボロボロなのに、赤ちゃんのお世話は待ってくれない」「里帰りもできないし、日中は誰も頼れない」――そんなママ・パパを助けてくれる公的な制度が産後ケア事業です。
助産師さんや保健師さんが、ママの体の回復・授乳・赤ちゃんのお世話を、宿泊・日帰り・訪問の形でサポートしてくれます。
この記事では、産後ケア事業の対象になる人・受けられる3つの型(宿泊型・デイサービス型・訪問型)・準備するもの・申請の流れ・利用のコツを、はじめての方にもわかりやすくまとめました。
「頼っていいのかな」とためらっているうちに、産後の一番つらい時期は過ぎてしまいます。制度を知って、早めに動くための1本です。
産後のママ・パパを支えるシリーズもあわせてどうぞ
産後ケア事業とは?できることを一言で
産後ケア事業とは、出産したママと赤ちゃんが、助産師さんなどの専門家からケアやサポートを受けられる公的なサービスです。
お住まいの市区町村が行っていて、費用の多くを自治体が負担してくれます。
もともとは自治体ごとの取り組みでしたが、母子保健法という法律が改正され、2021年(令和3年)4月から、全国の市区町村が取り組むよう努める制度になりました。
つまり「一部の地域だけの特別なサービス」ではなく、どこに住んでいても相談できる、あたりまえの制度になったということです。
受けられる主な内容は、次のようなものです。
- ママの体の回復のための休養(ゆっくり眠れる時間の確保)
- 授乳の相談・おっぱいのケア(母乳やミルクの悩み)
- 赤ちゃんのお世話のアドバイス(沐浴・抱っこ・寝かしつけ)
- 子育ての不安やイライラ、気持ちのつらさの相談
核心:産後ケアは「甘え」ではなく、法律で決められた正式なサポートです。産後のママが体を休め、安心して赤ちゃんと過ごすための、堂々と使っていい制度です。
産後は、ホルモンの大きな変化と睡眠不足が重なって、気持ちが不安定になって当たり前の時期です。
「なんだか涙が出る」「イライラする」というのは、心が弱いからではなく、体の自然な反応です。
だからこそ「助けを求めること」は大切な力です。心理学でも、つらいときに人に頼れることは心の健康を守る力(援助を求める力)と考えられています。
対象になるのはどんな人?

産後ケア事業の対象は、基本的に「出産後1年以内のママと赤ちゃん」です。
「体を休めたい」「授乳がうまくいかない」「育児が不安」といった、心身のケアやサポートが必要な人が利用できます。
特別な病気や深刻な事情がなくても大丈夫です。
「里帰りができない」「日中ひとりで不安」「上の子がいてゆっくり休めない」――そんな理由でも利用できるのが、この制度のやさしいところです。
ただし、対象の期間や条件は自治体によって少しちがいます。
「産後4ヶ月まで」「産後6ヶ月まで」など、宿泊型だけ期間が短い場合もあります。
くわしくは、お住まいの市区町村の窓口(こども家庭センターや保健センター)で確認してください。
受けられるのは3つの型(宿泊・日帰り・訪問)
産後ケアには、大きく分けて3つの型があります。
自分の体の状態や、家の事情に合わせて選べます。
1. 宿泊型(ショートステイ)
病院や助産院などに数日泊まって、しっかり休めるタイプです。
夜間も助産師さんなどがいてくれるので、夜の授乳を代わってもらって眠ることもできます。
「とにかく一度ぐっすり眠りたい」というママにおすすめです。
2. デイサービス型(通所・日帰り)
施設に日中だけ通って、ケアや相談を受けるタイプです。
お昼寝をさせてもらったり、授乳の相談をしたり、ほかのママと話せる施設もあります。
「泊まるのは大変だけど、日中だけ休みたい」という人に向いています。
3. 訪問型(アウトリーチ)
助産師さんなどが自宅に来てくれるタイプです。
外出の準備がいらないので、上の子がいる家庭や、外に出るのがつらい時期にぴったりです。
自宅で授乳のようすを見てもらえるので、その場で具体的なアドバイスがもらえます。
それぞれの特徴を、下の早見表にまとめました。

📱 この早見表は画像として保存できます。画像を長押し →「写真に保存」(iPhone・Androidどちらも同じ)で、いつでもサッと見返せます。
どの型があるか、何日まで使えるかは自治体によってちがいます。
3つすべてがそろっている地域もあれば、一部だけの地域もあります。
申し込む前に準備するもの(チェックリスト)
いざ申し込むときに、あわてないための持ちものリストです。
自治体によって必要なものは変わりますが、だいたい次のものがあれば安心です。
- 母子健康手帳(母子手帳)
- 健康保険証(ママと赤ちゃんの分)
- 申請書(市区町村の窓口やホームページで入手)
- 本人確認できるもの(マイナンバーカード・運転免許証など)
- 住民税の課税・非課税がわかるもの(必要な自治体のみ)
- 利用料の支払い方法の確認(現金・振込など)
住民税非課税世帯や生活保護世帯は、利用料が安くなる(減免される)しくみがあります。
「お金が心配で使えない」とあきらめる前に、まず窓口で減免について聞いてみてください。
お金のこと:利用料は自治体によって大きくちがいます。1回数千円のところが多いですが、非課税世帯などは無料や割引になる場合があります。金額は必ずお住まいの市区町村で確認してください(2026年9月時点)。
申請の流れ ステップ1〜5

ステップ1:市区町村の窓口を調べる
まずは、お住まいの市区町村の「こども家庭センター」や「保健センター」が窓口です。
市区町村のホームページで「(自治体名) 産後ケア」と検索すると、案内ページが見つかります。
ステップ2:申請書を出す
申請書に、希望する型(宿泊・日帰り・訪問)や希望日を書いて提出します。
妊娠中や産後すぐの面談のときに、あらかじめ申し込んでおける自治体もあります。
ステップ3:利用できるか決まる(承認)
申請すると、市区町村が内容を確認して、利用できるかどうかを決めます。
「利用決定通知」や「利用券」が届いたら準備完了です。
ステップ4:施設を予約する
利用できる施設(病院・助産院など)に連絡して、日にちを予約します。
人気の施設は埋まりやすいので、使いたい日が決まったら早めに予約しましょう。
ステップ5:当日、ケアを受ける
予約した日に、母子健康手帳などを持って利用します。
体を休めたり、授乳を相談したり、遠慮なく専門家を頼ってください。
「こんなこと聞いていいのかな」と思うことこそ、聞くチャンスです。
産後ケアでやりがちな3つのもったいないこと

NG1:「元気だから」と限界までがまんする
産後は、痛みや疲れを感じにくくなっていることがあります。
「まだ大丈夫」とがんばりすぎて、あとから一気に体調をくずす人は少なくありません。
つらくなる前に、元気なうちに予約しておくのが正解です。
NG2:産後になってから初めて調べる
産後は、体もつらく、赤ちゃんのお世話で手いっぱいです。
そのタイミングで一から制度を調べるのは、なかなか大変です。
妊娠中のうちに窓口や申請方法を調べておくと、産後スムーズに使えます。
NG3:パパが「ママの問題」だと思ってしまう
産後ケアは、ママだけでなく家族みんなを助ける制度です。
申請書を書いたり、窓口に電話したり、施設を予約したり――こうした手続きは、パパが動けるところがたくさんあります。
「調べて予約しておいたよ」の一言が、産後のママにとって何よりの支えになります。
産後ケアを上手に使う5つのコツ
1. 妊娠中から情報だけ集めておく
出産前の余裕があるうちに、お住まいの自治体の産後ケアのページをブックマークしておきましょう。
窓口・対象・料金をメモしておくだけで、産後の動きがぐっとラクになります。
2. 「どの型が合うか」を家族で話しておく
宿泊がいいのか、日帰りがいいのか、訪問がいいのか。
体の状態や上の子の有無で変わります。
産む前に家族で希望を話しておくと、いざというとき迷いません。
3. 「休むために使う」と割り切る
産後ケアは、がんばるために使うのではなく休むために使うものです。
「何もせずに眠るだけ」でも大正解。
体を回復させることが、赤ちゃんのためにもなります。
4. 気になることはメモして持っていく
授乳・寝かしつけ・自分の体のことなど、聞きたいことをスマホにメモしておきましょう。
その場で専門家に相談できるので、ネットで調べて不安になる時間が減ります。
5. 1回で終わりにせず、必要なら何度でも
産後ケアは、体調や気持ちに合わせて何度か使える自治体が多いです。
「1回使ってよかった」と思ったら、遠慮せずまた頼ってください。
産後のママの回復を、家族に合ったペースで支えていきましょう。あわせて産後の家族サポート依頼ガイドも参考になります。
よくある質問
Q1. 特に体調が悪いわけではありませんが、使ってもいいですか?
はい、大丈夫です。
「病気」ではなくても、疲れをとりたい・育児が不安・少し休みたいという理由で使えます。
「頼っていいのかな」とためらう必要はまったくありません。
Q2. 料金はいくらくらいかかりますか?
料金は自治体によって大きくちがいます。
宿泊型で1泊数千円ほどのところが多いですが、住民税非課税世帯などは無料や割引になる場合があります。
正確な金額は、お住まいの市区町村で確認してください(2026年9月時点)。
Q3. いつまで利用できますか?
基本は産後1年以内です。
ただし宿泊型だけ「産後4ヶ月まで」など、型ごとに期間が短い自治体もあります。
使いたい型の期間を、早めに確認しておくと安心です。
Q4. 里帰り先(実家のある自治体)でも使えますか?
自治体によって対応がちがいます。
住んでいる市区町村と里帰り先が連携して使える場合もあれば、住民票のある自治体でしか使えない場合もあります。
里帰りを考えている人は、両方の自治体に早めに確認してください。
Q5. 赤ちゃんも一緒に連れていくのですか?
はい、基本はママと赤ちゃんが一緒に利用します。
赤ちゃんのお世話を手伝ってもらいながら、ママが休むというイメージです。
上の子を預けられるかどうかは、自治体や施設に相談してみてください。
Q6. パパだけで申し込みや相談はできますか?
はい、パパが窓口に相談したり、申請の手続きを進めたりできます。
産後のママは動くのが大変なので、手続き面はパパが引き受けると大きな助けになります。
産後のパパの動き方は産後のパパの役割ガイドもあわせてどうぞ。
Q7. 産後ケア以外に、産後に使える制度はありますか?
あります。
出産後の手続きは出産後にやること・手続き一式ガイド、赤ちゃんの健康チェックは乳幼児健診ガイド、パパの育休は産後パパ育休・育児休業給付金ガイドにまとめています。
いくつかの制度を組み合わせて、産後の時期を乗り切ってください。
🛍️ 産後のママの体をいたわる育児グッズ
産後の休養に役立つ「授乳クッション」「円座クッション」「骨盤サポートベルト」など、わが家で実際に使ってよかったアイテムは楽天ROOM(papasuta-room)にまとめています。
まとめ:今日からできる1つ
やりがちな3つのもったいないを回避
- 「元気だから」と限界までがまんしない
- 産後になってから初めて調べない(妊娠中に準備)
- パパが「ママの問題」だと思わない
産後ケアを上手に使う5つのコツ
- 妊娠中から情報だけ集めておく
- 「どの型が合うか」を家族で話しておく
- 「休むために使う」と割り切る
- 気になることはメモして持っていく
- 1回で終わりにせず、必要なら何度でも
今日からできる1つ:スマホで「(お住まいの市区町村名) 産後ケア」と検索して、窓口と対象・料金のページをブックマークしてください。それだけで、産後に慌てず動けるようになります。
産後ケア事業は、「甘え」ではなく法律で決められた正式なサポートです。
産後のママが体を休め、赤ちゃんと安心して過ごすために、堂々と使ってください。
制度を知って早めに動くことが、家族みんなの笑顔につながります。金額や条件は自治体で変わるので、必ずお住まいの市区町村で確認してください(2026年9月時点の情報)。
あわせて読みたい育児記事
参考(公式サイト・2026年10月確認)
- 母子保健|産前・産後サポート事業、産後ケア事業(こども家庭庁)
- 産後ケア事業ガイドライン(令和8年3月)(こども家庭庁)
- 大阪市:産後ケア事業について(大阪市こども青少年局)
制度の内容は変わることがあります。手続きの前に公式サイトとお住まいの自治体で最新の情報を確認してください。